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夏休みの最後に焦らないために、備えあれば憂いなし
子どもたちの特権とも言える長期休暇”夏休み”ですが、ココロ踊るばかりではなく、ココロ苦しい悩みの種もあります。それが「夏休みの宿題」です。地域や学校によって様々ですが、30数年前を思い出してみても全教科で大なり小なりの宿題や課題があり、特に「自由研究」「絵画」そして1行20字×20行の原稿用紙×2~3枚の「読書感想文」はラスボス級として君臨していた記憶があります。
ココロ苦しいと表現したのは、膨大な宿題があるにもかかわらず、親から「宿題は大丈夫なの⁉」と問われるたびに、「大丈夫、大丈夫」などテキトーにその場しのぎしながら夏休みを謳歌し、宿題を最終週、あるいは最終日まで先延ばし(ほったらかし)していることを、子どもながらに自覚しているからかもしれません。
ちょうど先日、ネットニュースで「読書感想文のテンプレ」に関する記事を読み、確かに小学生時代に「読書感想文のテンプレ」があればなぁ、と思ったこともあり、「読書感想文の攻略法」をお届けすることにしました。
今でこそ原稿用紙1枚400字をはじめ、3枚1200字ぐらいなら小1時間もあれば対応できますが、当時は「どうやれば文字数を増やせるのか」「その前に何を書けばいいのか」「最初から最後まであらすじで乗り切る」、「それよりも本を読まないと…」など、おそらく大多数の子どもと同じく、読書感想文に真摯に向かうというより、なんとかやっつけで逃げ切ったとの印象しかありませんが…。
800 or 1200字と考えるよりも要素ごとに行数で考えるとスムーズで調整も楽に!
さて、そんな夏休みの宿題のラスボス「読書感想文」の攻略法を。原稿用紙1枚は1行20字×20行の400字だとすると、小学生や中学生の指定文字数は2枚の800~3枚の1200字が一般的ではないでしょうか。今の教育現場がどうか分かりかねますが、普段から文章を書くことに慣れていなかった30数年前は、私もそうですが周囲の友達も皆「800字なんて書いたことない!」「原稿用紙3枚⁉ 小学生で書ける人いるの?」など好き勝手に「やれない言い訳」を探していたような気もします。
第8話では全て2枚800字の40行を想定して展開します。400字なら行数や文字数を半分に、1200字なら行数や文字数を1.5倍にしていただけると幸いです。では、要素分けとおおよその行数から。文字数で考えると「ラスボス」ですが、要素ごとに小分けにする行数で対処すると「中ボス」ぐらいに感じられますので。
- 読書感想文の本選び 3~5行(60~100字)
- あらすじ紹介 5~7行(100~140字)
- 最も印象に残った場面や表現 7~10行(140~200字)
- 筆者が最も伝えたかったテーマについて 10~13行(200~260字)
- この本を読んでの感想まとめ 10~13行(200~260字)
これで35~48行(700~960字)になりますので、自分が書きやすい要素を増やすなど、文字数を調整しながら800字を目指しましょう。基本的には指定された行数を超えてはいけませんので、40行指定なら38~40行で仕上げることが大切になります。※文字数等は各学校や各コンクールの規則を遵守しましょう。
それでは早速1から5の詳細に。
読書感想文の本選び ~5行(~100字)
読書感想文攻略の第一歩は「本選び」になります。今回は第67回青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」を参考に、候補の本を紹介してみます。各学校ごとに課題図書はあるかと思われますので、本選びや読書感想文の書き方の参考材料として考えていただけると幸いです。
また、当記事と第67回青少年読書感想文全国コンクールは無関係であり、あくまでも読書感想文を苦手とする小学生や中学生に、読書感想文の対処法や文章の書き方、そして読書や文章の魅力や楽しさに少しでも触れていただけることをテーマに掲げていることをご理解ください。もちろん、当記事を目にして、第67回青少年読書感想文全国コンクールへ応募される方がいたら理想的ですが。
課題図書選びで重要なことは「自分との接点がある本を選ぶ」ことです。スポーツ好きならスポーツがテーマの本を、料理好きなら料理がテーマの本となります。また、表紙のデザインに興味を抱いた、著者の名前が自分の名前と同じだから、など、何でもOKですので、接点がある本を選びましょう。
※課題図書のタイトルと紹介文。紹介文の漢字レベルは各学年レベルを優先。
【小学校低学年の部】
あなふさぎのジグモンタ
・ズボンやくつしたの「穴」をふさぐジグモのジグモンタがくり広げる楽しい物語。
そのときがくるくる
・きらいな食べものが食べてみたくなる、食べられるようになる時がくる!?
みずをくむプリンセス
大切な水、水くみをするアフリカの少女の1日を描いた絵本。
どこからきたの?おべんとう
・農家や漁師さん、運転手さん…みんなの愛情がいっぱいつまったおべんとうの話。
【小学校中学年の部】
わたしたちのカメムシずかん
・くさい虫としてやっかいもののカメムシが、宝ものになった本当のお話の絵本。
ゆりの木荘の子どもたち
・老人施設で暮らすお年寄りが、ある日とつぜん子どもになる、タイムリープファンタジー。
ぼくのあいぼうはカモノハシ
・ドイツ在住の男の子が動物園から逃げたカモノハシのオーストラリア帰郷を手伝う冒険物語。
カラスのいいぶん:人と生きることをえらんだ鳥
・毎日の時間割や子そだて…。人の生活エリアで暮らす「カラスのいいぶん」が詰まった一冊。
【小学校高学年の部】
エカシの森と子馬のポンコ
・長老の木エカシが見守る森で、伸びやかにくらす子馬のポンコの成長物語。
サンドイッチクラブ
・小学校最後の夏休み、性格も環境も異なる2人が出会い、互いを認めて成長する物語。
おいで、アラスカ!
・不仲だったが、介助犬のアラスカを通じて深まる友情、不安や勇気を描いた作品。
オランウータンに会いたい
・オランウータンの生態に迫り、研究を通じて未知の世界と魅力を伝える作品。
【中学校の部】
with you(ウィズ・ユー)
・母親の介護に携わる「ヤングケアラー」少女に出会った少年の物語。
アーニャは、きっと来る
・第二次世界大戦中のフランス山間部の村を舞台に、映画化された感動作。
牧野富太郎:日本植物学の父
・1500種類以上の植物に命名した植物学者・牧野富太郎の生涯を描く。
となります。第8話の対象は小・中学生の読書感想文ですので、「高等学校の部」は省きます。
例えば【小学校中学年の部】わたしたちのカメムシずかん:やっかいものが宝ものになった話なら
僕がこの本を選んだ理由はカブトムシやクワガタなど虫が好きだからです。いつもはマンガを買うことが多い近所の本屋さんで、二人の男の子を中心に楽しそうな小学校の表紙イラストだったこともあり手に取りました。(一字下げ含めて5行100字)
また、【中学校の部】with you(ウィズ・ユー)なら
祖父母と同居しており、介護現場を目の当たりにしていることもありこの本を選びました。また将来は英語を使う仕事に就きたいと考えていることもありwith youという英語のタイトルにも興味を抱きました。(一字下げ含めて5行98字)
という感じです。ポイントとしてこれらの要素をより具体的に書くと文字数も調整しやすく、読書感想文としての重みや説得力も増します。
- その本を選んだ自分との関係(虫が好き、スポーツ好き、介護現場を目の当たりにetc…)
- 本を選んだ場所となる本屋や図書館との関係(近所の、最寄り駅近くの、オープンしたばかりのetc…)
- タイトルやイラストに興味を持つなど手に取った理由(イラストがキレイで、将来は英語の仕事にetc…)
- 著者に興味を抱いた、海外に興味があるので翻訳図書を選んだなどでもOK
あらすじ紹介 5~7行(100~140字)
では次に「あらすじ紹介」を5~7行(100~140字)で展開してみましょう。偉そうに書いていますが、30数年前はあらすじ紹介だけしか書いていませんでしたが…。小学校の課題図書は複数あるかもしれませんが、学校の先生は課題図書は読破しているでしょうから、こちらが「ふむふむ、何とか読書感想文らしくなったか」と誇らし気でも、当時の先生からしたら「あ、また、あらすじ紹介か…」と思われていたことでしょう。
少しでも読書感想文の印象を良くするためにも「あらすじ紹介」のみで終わることは避けなければなりません。とは言え、「課題図書を読みました!」「内容を理解しました!」の体裁(証拠?)は必要ですので、最低限のあらすじを書いておくことも忘れずに。
あらすじ紹介に関しては、おそらく「読書感想文が苦手な人の中でも最も得意分野」かと思われますので、その得意分野の文字数をこれまでより少なく調整すれば大丈夫ですので、詳細は省きますね。5行~7行(100~140字)を意識しながら、あらすじ紹介は文字数調整がしやすいですので、まずは全体を完成させてから「あらすじ紹介で文字数調整」するのもスムーズです。
最も印象に残った場面や表現 7~10行(140~200字)
いよいよ読書感想文の山場とも言える「最も印象に残った場面や表現」と「筆者が最も伝えたかったテーマについて」に挑みます。まずは「最も印象に残った場面や表現」から攻略していきましょう。課題図書、全文を読んでいないので、サイト上で公開されている文章を「最も印象に残った場面や表現(仮)」として展開してみます。
では【中学校の部】with you(ウィズ・ユー)の「本をクリックして試し読み」で公開されている98、99ページを参考に、とりあえずチャレンジあるのみです。
読み進めていく中で私が最も印象に残ったセリフがあります。
「ヤングケアラー。十八歳未満で、家族の世話や家事をしている子ども」
本を選んだ理由にも書きましたが、祖父母と同居しているとはいえ、私の家では祖父母のお世話は主に両親が担当していますので、この場面には衝撃を受けました。何よりも「介護される人は高齢者」であり「介護する人は親世代か専門スタッフの方」との先入観があったことを痛感しました。
(1字下げ含め10行194字 引用箇所は太字で)
あるいはこんな感じでも良いかもしれません。
私の家は両親と姉と私の4人暮らしです。祖父母のお世話は同居している父の兄、母の兄がともに引き受けており、それが当然だと過ごしてきたこともあり「ヤングケアラー」の言葉すら知りませんでした。
非常勤の公務員として働きはじめて六、七年になる母は、今、福祉関係の部署にいるはずだ。それでもこういうことも知っているのだろうか。
との思いも無理はないだろうと感じつつ、自分と違う環境で生きる同世代の姿を想像しました。
(1字下げ含め10行200字 引用箇所は太字で)
「最も印象に残った場面や表現」のポイントはこんな感じでしょうか。
- 第1章や小見出しなど含め、セリフやシーンを具体的に書くこと
- 自分との共通点・相違点、未知の事柄など含めて最も印象に残った理由を書くこと
- 小学生・中学生なので、「知らない世界」「理解できない世界」などを素直に書くこともプラスに
- 絵本や挿絵の場合には、色使いやタッチなど印象に残った理由を具体的に書くこと
筆者が最も伝えたかったテーマについて 10~13行(200~260字)
ふぅ。さて、一つ目の山場「最も印象に残った場面や表現」を超えたところで待ち受ける二つ目の山場「筆者が最も伝えたかったテーマについて」に挑みましょう。
筆者が最も伝えたかったテーマはズバリ「本のタイトル」に凝縮されています。身も蓋もない結論ですが、タイトルには筆者の思いが込められています。例えるなら、一人一人の名前のように、生まれてきた子に名前を付ける際には、一般的には親が命名することが多いでしょうが、「こんな子に育ってほしい」との思いが込められていることでしょう。
今回の課題図書に挙がるタイトルで「筆者が最も伝えたかったテーマ」を推察してみましょう。
わたしたちのカメムシずかん
臭くて嫌われがちなカメムシも、よく観察してみると宝石のような輝きを放つカメムシもいるなど、子ども達が図鑑にしたくなるほどの魅力すらあることが描写されたシーンなど。
ゆりの木荘の子どもたち
本来は高齢者が暮らす施設「ゆりの木荘」であるにも関わらず、タイトルに「子どもたち」があることから、時間を超越した子どもになったお年寄りの行動や心理などを描いた場面など。
カラスのいいぶん:人と生きることをえらんだ鳥
人間の生活エリアを好み、厄介者としてとらわれがちなカラスの生態を調べることでカラス側の言い分もあること。人の視点だけではなく、カラスの行動や視点などが描写されているシーンなど。
などになります。タイトルはその本の内容を凝縮した「キャッチコピー」であり、「筆者が最も伝えたかったテーマ」でもあります。最も伝えたかったテーマが描写されている場面やシーン、絵本なら該当するページの絵のデザインなどを多角的に捉えることが大切です。
「筆者の最も伝えたかったテーマ」に対し
- その場面を読んで自分はどう感じたのか
- その場面において自分との共通点や相違点は何か
- その場面で自分だったらどのような行動をとるだろうか
- その場面を描写した筆者の意図や思いを想像する
ことなどが求められるでしょう。その場面を読んで、これまでに似たような経験があった場合には、自身の経験を交えながら展開すると効果的です。また、自身とは全く違う国や生活環境における場面なら、前述したように素直に「今までの人生で全く知らない世界で…」「私と同年代にも関わらず、時代や国が違うことでこれほど…」など自身の感想を織り交ぜながら展開するのも良いでしょう。
読書感想文で重要なことは、課題図書の内容をそのまま書くことではなく、自分自身の内容を織り交ぜながら書くことです。どのような内容でも「自分自身のオリジナル要素」が最も響きますので。
この本を読んでの感想まとめ 10~13行(200~260字)
さて、二つの山場を越えたら、最後は「感想まとめ」ですね。感想まとめのポイントとしては
- 読後の素直な感想
- 共感・感心・勉強となった点
- 時事ネタを織り交ぜる
- 今後の人生において意識すること
などを盛り込みながらまとめるとキレイに仕上がります。例えば
これまで一冊の本を時間を忘れて読むようなことはありませんでしたが…
最後まで読んでタイトルの意味が分かりました…
同年代の女の子がこのような思いで日々を過ごしていることに…
表紙が気に入って選んだ一冊でしたが、私の知らない世界が広がっていました…
私も同じような悩みを抱えていたこともあり、この本を読んだことで…
コロナ禍で迎えた2度目の夏、理不尽だと感じることは多々ありますが…
東京2020オリンピックパラリンピックが開催されたこの夏…
金メダルを獲得した〇〇選手も同じような想いを…
猛暑続きとなった2021年の夏…
カメムシ(カラス)のように実は魅力的な一面もあることを…
この本を読んで外国に興味を抱いたので、これから外国語を…
日本の高齢社会は加速しており、私も高齢者を支えられるように…
などを織り交ぜると10~13行(200~260字)ぐらいは効率的かつ効果的にまとめられるでしょう。
この記事のまとめ
さて、いかがでしたか。
読書感想文のまとめとしてはこんな感じになります。
- 自分との共通点や興味のある本を選ぶ
- ですます調、である調のどちらでも良いが、統一する
- 絵本ならイラストの色彩やタッチなどの感想も
- 800字、1200字と考えるよりも40行、60行と捉えるとスムーズ
- 要素を分けることで、書くことを明確にする
- 書ける要素から書き、行数は最後に調整する
- 自分自身に照らし合わせながら経験談や想いを盛り込む
読書感想文に正解があるのか分かりませんが、本文中にも書きましたが「最も大切なことは自身のオリジナル要素」を盛り込むことでしょう。「ほぼあらすじ紹介」では、オリジナル要素はゼロに近くなりますので…。
元号も昭和から平成、そして令和になり、Z世代やデジタルネイティブとの言葉も耳にします。時代の潮流に乗り、「読書感想文 書き方」「夏休みの宿題 読書感想文」等で検索された方へ、今回の記事で少しでもライティングに興味を抱いていただければ幸いです。