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文章の黄金比は、ターゲットにより異なる
「黄金比」のスパイスで、文章に彩りををお届けします。タイトル通り、今回のテーマは「文章における黄金比」です。デザインにおける黄金比はフィボナッチ数列による確たる値がありますが、文章にもあるの?と思われる方も多いでしょう。
「文章 黄金比」でググると「ひらがな7:漢字3」「ひらがな7:漢字2:カタカナ1」などの様々な記事とともに紹介されています。
もちろん三者三様のデータに基づいた黄金比だと思われますので、とても参考になります。ただ、もしかしたら媒体やジャンルをはじめ、対象年齢や性別等の詳細ターゲティングによって導かれたピンポイントの黄金比ではなく、あくまでもターゲティング設定のない母数の多い一般論としての黄金比に近いようにも感じます。
例えば、年齢や性別、興味関心等、セグメント問わずに「あなたの好きなお弁当は」と全国規模でアンケートした際のトップ候補は、ご飯と複数のおかずがあるバランスの良い「幕の内弁当」が最有力になるでしょう。
一方、同じアンケートでも、ターゲットを体育会系の学生限定にした場合は、「唐揚げ弁当」「ミックスフライ弁当」「カツカレー」など食べ応えのあるお弁当が上位を占めることになることでしょう。また、あるかないか分かりかねますが、「鶏ささみ弁当」「プロテイン三種盛り弁当」「八種サラダ弁当」など、ストイックなお弁当も上位進出の可能性もあります。
話しが逸れましたが、要するにターゲットに応じて「正解」は変わるということです。
文章の黄金比も同様に、媒体のターゲット、更には同じ媒体、例えばある大学の広報誌でも教授、在学生、学部紹介などコーナーごとにターゲットが異なる場合もありますので、その都度、黄金比も変わると考えたほうが良いでしょう。
特に紙媒体の中でも大学広報誌はターゲットをかなりピンポイントに絞っていますので、それぞれに最適な黄金比を意識すると、次回以降のご依頼につながりやすくなります。※大学広報誌をテーマにした記事は、また改めてお届けします。
紙、Web、SNSなど媒体に適した黄金比も存在する
また、紙媒体とWeb媒体では漢字の比率が著しく違います。特に限られた紙面(文字数)の中で必要な情報を伝える新聞では、より少ない文字数で表現するために漢字が多くなります。手元にある日本経済新聞にざっと目を通しても漢字が40%以上を占めている感じです。このように、新聞における黄金比では、漢字の比率が高くなります。
対してWeb媒体は文字数制限がありません。一昔前によく耳にした「SEO対策のために3000文字以上は…」のように、むしろWeb媒体では文字数は多いほど良い、との認識もありましたので、あえて漢字よりもカタカナなどで文字数を稼いでいるのかもしれません。また、縦書きの新聞、横書きのWeb媒体としての特性も影響していることでしょう。
ただ、近年のSEOのトレンドは「ユーザーが求めるオリジナルの情報が掲載されている」ことが良いWebサイトの指標となっています。こちらはWebナレッジ【入門編】CVアップにつながる不動産業界のリスティング広告クリエイティブ作成にある、Googleが掲げる10の事実をご参考に。
このように、文章における黄金比は、各媒体の特性やテーマ、ターゲットとする読者によって異なります。文章における実践的な黄金比の現時点での結論は「媒体やテーマに関係なく、初めてのライティング依頼において、同じ案件を次回以降もご指名で依頼されたらOK」です。
身も蓋もない極論に聞こえるかもしれませんが、「媒体のテイスト(トーン&マナー)はじめ、ターゲットとなる読者層の語彙レベル含め、文章として成立している」と、編集者や広報担当者はじめ責任者が最終OKを出したことの裏返しになります。
新規案件をクリアして次回も依頼があるようなら、まずはLvアップです。
【ライター業界あるある 4】
新規クライアントから初めてのライティング依頼時は、かなり早めに締め切りを設定されていることでしょう。理由は編集者や大学広報担当者にとって、そのライターの力量が分からないからです。
誤字脱字や事実誤認、テーマや文章構成自体が論外でやり直し…という最悪なケースまで、不安要素の対策に時間が必要だからです。
新規クライアントからの初受注の際には、設定された締め切り自体がタイトになりますが、出来れば取材日当日や翌日、遅くとも翌々日には初稿を提出するようにしましょう。
時間的に軌道修正も可能ですし、信頼も大幅にアップしますので。
黄金比の確認は、執筆する媒体の直近の過去記事が参考になります。初めての媒体やテーマを原稿にする際には、少なくとも直近3回分の過去記事を確認しましょう。例えるなら、受験生にとって志望する大学の赤本で出題の傾向と対策を把握するような感じでしょうか。
担当するコーナーのテイスト(トーン&マナー)はもちろん、漢字、ひらがな、カタカナ、そして数字やアルファベットの比率を把握することができますので、必ず確認しましょう。
このように本記事でお届けする黄金比は、それぞれの媒体やジャンル、ターゲットに最適となる実践的な比率を意味します。
今回は、どのような比率にも対応できるように、全ての「黄金比」スパイスをバランス良くブレンドしてみます。
黄金比のスパイスでランチレポ―トを彩ってみる
まずは第1話の「攻」「守」のスパイスのおさらいから
それでは、第1話【初級編】承認欲求を満たすSNSライティング、いいね増のランチレポ―トのスパイスは「攻」と「守」で作成したランチレポ―トを題材に、黄金比のスパイスを。
まずは「攻=主観」「守=客観」のスパイスイメージのおさらいから。
■「攻」スパイスはオレンジで
■「守」スパイスはグリーンで
肌寒い2月最後の出社日の金曜日、遅めのランチは学生時代から自然と手に取る麻婆丼。会社最寄りのファミマで「旨辛!四川風麻婆豆腐丼」を税込430円で初購入。豆腐層はスッと、ご飯層はグッと感じつつスプーンで。一口目から甜麵醬の甘さ、コク、ご飯との相性、更には四川風ならではのツンとした辛さまで。別添えの花椒で香りも倍増。油分光る赤茶色からの濃いめイメージを覆す逸品。味覚・嗅覚ともに本格中華を堪能した気がした。
第1話では、「主観の攻」と「客観の守」をテーマにお届けしました。蛍光ペンで改めて振り返ると、前半は当日の状況、商品名、値段などの客観的情報の比率が高く、後半は自分自身の感想となる「主観」でガンガン展開していることが一目瞭然ですね。文字数が少ない場合は、テンポよく序・破・急で。
蛍光ペンを削除したオリジナル文章を改めて見直すと…
肌寒い2月最後の出社日の金曜日、遅めのランチは学生時代から自然と手に取る麻婆丼。会社最寄りのファミマで「旨辛!四川風麻婆豆腐丼」を税込430円で初購入。豆腐層はスッと、ご飯層はグッと感じつつスプーンで。一口目から甜麵醬の甘さ、コク、ご飯との相性、更には四川風ならではのツンとした辛さまで。別添えの花椒で香りも倍増。油分光る赤茶色からの濃いめイメージを覆す逸品。味覚・嗅覚ともに本格中華を堪能した気がした。
ランチレポ―トとして「攻」「守」のスパイスで完成した文章ですが、200文字と限られた文字数の中でレポート調で届けるには、前述した新聞記事同様に少ない文字数で情報量の多い漢字の比率が高くなりがちです。
さて、今回はこのランチレポ―トをベースに「黄金比」のスパイスに絞り、文章を彩っていきます。現状のランチレポ―トは「数字」「記号」が少なく、そして英語等アルファベットはゼロですので、それぞれの比率を増やしてみましょう。
最適な彩り比率になるようにスパイスを
2月最後の金曜日、遅めのランチは学生時代から自然と手に取るマーボー丼♪ 会社から50mのFamilyMartで「旨辛!四川風麻婆豆腐丼」を430円で初購入。豆腐層はスッと、ご飯層はグッとスプーンで。甜麵醬の甘さ、コク、ご飯との相性、四川風ならではのツンとした辛さまで。別添えの花椒で香りも3倍up。油分光る赤茶色の濃厚イメージを180°覆す本場クオリティ。熱量507kcal、身もココロも満たすPremium Fridayだった。
こんな感じになりました。「Premium Fridayなんて誰にも浸透していないじゃないか⁉」とのご意見はごもっともです…。今回の目的は、文章の内容を変えることなく見え方を彩ることですので、あしからず。
SNSでのランチレポ―トで、体裁は自由ですので記号なども盛り込んでみました。もちろん、媒体によってはNGにもなりますので、各媒体のルールや表記等の確認は忘れずに。
「黄金比」のスパイスを加える前と加えた後の文章イメージ
黄金比のスパイス、背景色をこのように設定してみると、文章の見え方がどのように変わったのか、イメージしやすいかもしれません。
- ひらがな=そのまま
- 漢字=グレー
- カタカナ=琥珀
- 英語等アルファベット=オレンジ
- 数字=グリーン
- 記号等=紫
「黄金比」のスパイスを加える前のランチレポ―ト
-before-
肌寒い2月最後の出社日の金曜日、遅めのランチは学生時代から自然と手に取る麻婆丼。会社最寄りのファミマで「旨辛!四川風麻婆豆腐丼」を税込430円で初購入。豆腐層はスッと、ご飯層はグッと感じつつスプーンで。一口目から甜麵醬の甘さ、コク、ご飯との相性、更には四川風ならではのツンとした辛さまで。別添えの花椒で香りも倍増。油分光る赤茶色からの濃いめイメージを覆す逸品。味覚・嗅覚ともに本格中華を堪能した気がした。
「黄金比」のスパイスを加えた後のランチレポ―ト
-after-
2月最後の金曜日、遅めのランチは学生時代から自然と手に取るマーボー丼♪ 会社から50mのFamilyMartで「旨辛!四川風麻婆豆腐丼」を430円で初購入。豆腐層はスッと、ご飯層はグッとスプーンで。甜麵醬の甘さ、コク、ご飯との相性、四川風ならではのツンとした辛さまで。別添えの花椒で香りも3倍up。油分光る赤茶色の濃厚イメージを180°覆す本場クオリティ。熱量507kcal、身もココロも満たすPremium Fridayだった。
今回はどのような比率にも対応可能な「彩り」最優先で、あえて様々なスパイスを振りかけてみました。元のランチレポ―トにはなかった英語(アルファベット)のオレンジをアクセントに、数字のグリーンを3倍にして文章全体に散りばめ、記号の紫は強めなので1つ増やしてみました。
なんとなく文章が彩り鮮やかに、ピリリとspicyになったような…。
まとめ
いかがでしたか?
今回はひらがな、カタカナ、漢字、数字、英語(アルファベット)、記号など、文章の内容は保ちつつも、見た目を華やかにする実践的な「黄金比」のスパイスとなります。
本文中にも触れましたが、ライティング依頼において重要なことは「媒体のターゲット」「掲載する原稿・記事の目的」を知ることです。
大学広報誌では顕著ですが、広報課が書いてほしいであろう内容を理解した上で、ライター自身の経験やスキルというフィルターを通じて、ライター自身の腕を反映した記事に仕上げることが求められます。
例えば、ある大学の広報誌でサークルや学食紹介コーナーの原稿依頼に対して、目的が受験生を増やすためなのか、在学生の交流促進や学食利用アップのためなのか、によって原稿内容やテイストは変わります。
受験生を増やす目的であれば、楽しく充実したキャンパスライフを想起させる内容などが良いでしょう。また、在学生の交流促進や学食利用アップ目的なら、そのサークルメンバーの趣味やタイプを、また学食紹介では定番モノより季節限定メニューや栄養価特集などが反響につながりやすくなります。
さて、これまで後輩や新人ライターから「文章に正解はあるのですか?」と質問されたことも少なくありませんでした。その都度、「また次も依頼されたら、とりあえずは正解のような…」と曖昧に応えてきました。ただ、自分なりには「文章に正解はある」を追い求めていますが。
第1話は「攻」「守」のスパイス、第2話は「黄金比」のスパイス、そして第3話のスパイスはこれから考えます。何かご希望のスパイスがあればブレンドしてみます。
この記事を通じて、少しでも文章に興味を持っていただけると嬉しいです。